【レビュー】アルパインVIE-X008EX-PRA

アルパインが車種専用&大画面ナビ「ビッグX」を初めて発売してヒットしたのは2009年だったか。その後、いくつかのメーカーが追随したが、やはり元祖は強かった。次の一手として「ビッグX EX」を考えていたのだ。


試乗したのは、昨年12月に発売されたプリウスα用の「ビッグX EX」VIE-X008EX-PRA(オープン価格)。8型WVGAモニター搭載のメモリーAVナビだ。地図データ用には16GBのSDカードを使い、もうひとつ音楽用のSDカードスロットも装備。内蔵の地デジチューナーは12セグ&ワンセグ受信が可能な4チューナー×4アンテナタイプで、車種専用スティックアンテナを同梱する。

アルパインVIE-X008EX-PRAはプリウスα専用の8型SDナビ
音響調整などもあらかじめ車種専用に設定済み
このEXだが、完全に受注生産。注文を受けてからナビ本体と車種専用パネルや配線類を合体させ、ワンパッケージで出荷されるだけではなく、オープニング画面や音響セッティング、カメラガイド線などまで、車種専用に設定済みだから、装着後すぐに、プリウスαに最適な状態で使える。

デザインとフィット感も、他社の車種専用ナビとは一線を画す。通常、車種専用モデルというと、パネルを純正の内装色に合わせるのが常套手段だが、プリウスα用ビッグX EXのパネルは、あえて純正色とは異なるピアノブラックを採用している。また画面左右のボタンの外側にはグラデーションのホワイトLEDを配し、ライトアップする演出も。さらに、左のLEDの外側にはあえてシルバーのパネルを配置した。ナビ部右の純正パネルがシルバーなので、これに合わせたデザインだ。
AVとMODEのボタンの横にホワイトLEDのイルミが
このようなデザインはハズすと違和感が出てしまうが、そこはさすがアルパイン。純正インテリアに上手く馴染ませながら、自己主張も欠かさない。このあたりが、純正ナビでは得られない、ユーザーの満足感につながるのだと思う。

操作のわかりやすさもポイントが高い。「ビッグX EX」にはメニューというボタンが無く、地デジへの切り替えや目的地の検索など、基本操作への入り口はワンタッチ。この操作回数の少なさは、車内で使う上でありがたいし、初めて触っても、なんとなく使いこなせてしまう。唯一「MODE」というボタンがわかりにくいが、これは他社の多くが「ソース」と表記しているボタンで、これをAVメディアを切り替えるメニューが登場する。これも一度覚えてしまえば問題ない。

ところで最近、スマホのようなフリック&ドラッグを採用したり、タッチパネルに触らずに操作できるなど、ユーザーインターフェイスに工夫を凝らしたカーナビが増えているが、それらに比べると「ビッグX EX」の操作はオーソドックス。ドライブインフォの表示箇所の入れ替え以外は、タッチパネルとハードキーで操作する。

ドライブインフォの表示入れ替えはドラッグで
これは、技術的にできないというわけではなく、ユーザーにとってどんな操作がもっとも使いやすいかを考えた結果だと思う。というのも、アルパインは早くからカーナビにドラッグ操作を導入したメーカーのひとつ。今でもドライブインフォの表示箇所の入れ替えはドラッグ操作で行う。しかし、全面的にフリック&ドラッグ操作を採り入れなかったのは、スマホ同等の速さが実現できなければ、かえってストレスになることがわかっているからだろう。

実際、フリック&ドラッグやピンチイン&アウトの操作ができると言われると、僕は手持ちのiPhoneやiPadのレスポンスを期待してしまう。が、それ並みにサクサク動くのはケンウッドくらいで、他はスマホ並みのレスポンスに到達していないというのが現実だ。それならば、あえて新しいユーザーインターフェイスを導入せずに、従来通りのタッチパネルで、快適な操作感を実現するというのは正解だと思う。ステアリングリモコンとも連動し、使いやすさは上々だ。

肝心のナビ機能だが、とくに不満を感じることはない。カロッツェリアのスマートループのようなVICSの約10倍もの充実した渋滞情報は無いし、スマホアプリとの連携機能も無いなど、欲をいえばきりが無いのだが、通常のドライブには支障なし。過去の渋滞統計データに基づく渋滞予測情報を収録しているので、VICS無しでも渋滞(しているかもしれない)箇所は地図上に表示できる。また、スマホアプリ連携に関しては、ユーザーのアンケートを元に、実際に使用している人は少ないとの判断から、導入を見送ったのだそうだ。
看板表示は大きく見やすい。わかりやすい案内だ。
地図+映像の2画面も多彩
AVナビだから、オーディオ機器としても活躍するわけだが、音質はトップクラス。いまカーナビでは、音がいい=ダイヤトーン・サウンド・ナビという図式だが、音の傾向は異なるものの、唯一、いい勝負ができるのが「ビッグX EX」だろう。低域のエネルギー感など、部分的にはダイヤトーンより魅力的な面もある。プリアウトがサブウーファー用の1系統しかないので、さらにシステムアップしたいという人には不向きだが、ナビ+スピーカーで完結で、できるだけ音のいいナビが欲しいといういうなら、ダイヤトーンと並んで候補に挙げたい。
タイムコレクション等、音質調整機能も充実
AVナビには、ナビ機能だけではなく、音質、操作性、デザイン性など、様々な要素が求められる。それらのバランスが、高い次元でとれたナビだと思う。

アルパイン