世界初の車載フルデジタルスピーカーをクラリオンが開発中

クラリオンが車載用としては世界初のフルデジタルスピーカーを開発。省電力が求められる電気自動車やハイブリッド車、アイドリングストップ車などに向けたカーオーディオシステムとして、製品化を目指している。(2011/3/29)

従来のスピーカーはCDなどのアナログ信号をデジタル/アナログ(D/A)コンバーターでアナログ信号に変換したのち、パワーアンプで増幅してスピーカーを駆動する。つまりスピーカーを駆動するのはアナログ信号だ。ところがフルデジタルスピーカーは、0と1のデジタル信号をスピーカーに直接入力する。もちろん、CDなどのデジタル信号をそのまま直接入力するわけでは無く、信号処理部で6つの異なるデジタル信号に分けられ、それがフルデジタルスピーカーに装備された6つのボイスコイルに、デジタル信号のままで入力される。ものすごく乱暴な言い方をすると、この6つのボイスコイルが6ビットのD/Aコンバーターの役割というわけだ。

パワーアンプの役割を果たすのは信号処理部。Dnotoというデジタル信号処理技術が使われたこの部分は、乾電池3個程度の電圧で動き、しかもそれほど多くの電流を流さなくても、普通に大きな音で音楽を鳴らしてくれる。消費電力は従来のシステムの約8分の1程度。つまり、ものすごく省電力のシステムを構築できるのだ。

これは、電気自動車がハイブリッド車、アイドリングストップ車などの、いわゆるエコカーに有効。電気自動車の場合、クルマを動かすモーターとオーディオなどの電装系の電源は別系統とはいえ、電装系の電力消費が大きければ層強距離が伸びないし、ハイブリッド車やアイドリングストップ車も同じこと。今後はオーディオ機器にも省エネが求められるというわけで、それを先取りするのが、このフルデジタルスピーカーなのだ。

試作機の音を聴いてみたが、高域の乱れや低域の軽さなど、気になる点がいくつかあったものの、ポテンシャルを感じさせる音だった。低域から高域まで全帯域にわたるレスポンスの良さが、この方式のスピーカーの持ち味のようで、小気味いい音楽を聴かせてくれる。もしかすると、将来のエコカーは、すべてフルデジタルスピーカーになっている…そんな可能性も感じさせるスピーカーだ。
クラリオンが開発中のフルデジタル・スピーカー。発売はまだまだ先の模様


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